「感性が自然に擬態する」という着想は、「自然を描くとは何か」という問いに対する、私たちなりの答えだ。擬態とは、生物が他の動植物や環境に姿や様子を似せることを指す。ここではその意味を生物学的な枠組みを超えて、人間の感性が自然に限りなく近づこうとする行為として捉えてみる。そして、制作行為を「擬態」として読み解く。

本展では三者の作品を通じて、「自然を描く」という行為を見つめ直す。自然に対する感覚や姿勢は、三者それぞれに異なり、描かれる風景はしばしば記憶や身体感覚と重なり合う。制作のプロセス自体が自然の摂理と呼応するかのように構築されていく。

佐藤健太郎は、水や風の流動性を用いて、自然のもつ流れや循環のイメージを画面に定着させる。土田翔は、直写という表現手法を用い、自然との関係性を強めようと試みる。安田萌音は、土が乾いていくなかで生まれるひび割れを、自然が描く線として作品に取り込む。

自然は私たちの外側に存在するだけでなく、経験されたものとして内側にも存在している。本展に参加する作家たちは、単なる写実や風景描写にとどまらず、そうした複数の自然を捉えようとする。そして、「自然を描くこと」の意味を再考していく。